なかひらまい 著 名草戸畔〜古代紀国の女王伝説 増補改訂3版
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<<お詫びとおしらせ>>
名草戸畔の本は現在、新装版の刊行に向けて、著者のなかひらまいが新たな取材を始めています。新装版には増補改訂三版のテキストに、追加取材のテキストを加え、ページ数を増やしたかたちで出版する予定です。取材の進行具合にもよりますが、おそらく2024年の秋以降の発売になると思います。現在、和歌山の宇賀部神社にも在庫がなく、大変ご迷惑をおかけしています。もうしばらくお待ち下さい。
<<著者からのメッセージ>>
この作品は、名草地方(現在の和歌山市と海南市)で語り継がれてきた古代の女王・名草戸畔(なぐさとべ)の伝承をもとに構成したものだ。名草戸畔(なぐさとべ)とは、紀国(現在の和歌山県)におよそ二千年前に実在したと思われる女性首長のことだ。『日本書紀』に、ひと言だけ、神武に殺されたと記されている。土地には、ナグサトベの遺体を、頭、胴体、足の三つに分断し、三つの神社に埋めたという伝説もある。多くの人は、名草戸畔(なぐさとべ)は神武あるいは神武軍によって、遺体を切断されたという。ところが、わたしが調べていくうちに、一般的に語られていることとは違う伝承を郷土史家・小薮繁喜氏と海南市の「宇賀部神社(うかべじんじゃ・通称:おこべじんじゃ)」宮司家出身・小野田寛郎氏から採集した。わたしは、この二人が見ている古代の風景を描いてみたいと考えた。
二人が語る伝承は、この土地に暮らす人たちの間で語られてきた物語だ。したがって、本書は『日本書紀』にも『魏志倭人伝』にも書かれていない「民間伝承」が中心になっている。そうした民間伝承は、史実かどうかわからないので受け入れられないという人も多い。なかにはこの本を読んで、「伝承に都合のいい資料ばかりを用意したのではないか」といいだす人もいると思う。しかし、庶民の間でこのような物語が伝わってきたことも、また事実なのだ。日本では、外国のネイティブ・アメリカンやアボリジニの伝承は文化として評価されるのに、自国の民間伝承や宮司家の「口伝」となると、眉唾扱いされてしまうことが多い。なぜなら日本は様々な文化を受け入れて近代化の道を歩んだため、古代の神話や伝承が原型を止めた形で残っているわけではないからだ。後世、土地の人たちや宮司家の妄想によって変形してしまった伝承もある。
しかし、たとえ多少変形したとしても、伝承が根強く生き続けてきた背景には、それなりの理由があるはずだ。小野田氏によると、小野田家はナグサトベの末裔であるという伝承が内々で伝えられてきたという。信じる・信じないは別にして、読者の皆さんには、今まで語られることがなかった先住民たちの物語を楽しんでもらいたい。そして、幼い頃からこの伝承を聞いて育ち、自分自身をナグサトベの子孫と信じてきた小薮氏と小野田氏の心に触れて欲しい。数千年前に生きたナグサトベを遠い祖先と感じる二人の心からは、人の営みが何千年もの積み重ねの上に成り立っていることを知ることができる。伝承は、すべて史実ではないかもしれないが、わたしたちの心にとって大切なものがたくさん含まれているのだ。(文/なかひらまい)
<<本の目次>>
第一章 謎の女王と里の伝承 プロローグ/旅のはじまり/物語を探せ/名草戸畔の基礎知識 /遺体を切断された名草戸畔/名草王國の盛衰 /名草の里へ/伝説の神社/名草山の奇跡/小薮繁喜氏と名草戸畔 /演劇「名草戸畔」/名草山と中言神社/「小薮台本」は伝承か、創作か?/名草戸畔は男か? 女か?/名草戸畔研究の限界 第二章 小野田寛郎氏が語る名草戸畔伝承 プロローグ/小野田寛郎氏と名草戸畔/神武東征のあらまし/小野田寛郎氏インタビュー/口伝に残された庶民の歴史/全国各地に残された口伝/小野田家と宇賀部神社の歴史/名草戸畔の足跡~そのはじまり/名草戸畔、木国から紀国へ/出雲族との融合/イタケルとの融合/神武軍との戦い/熊野へ進軍した神武軍とその後のヤタガラス ナガスネヒコの終焉と紀氏の台頭/『日本書紀』の成立と名草戸畔/名草戸畔の死と生/名草戸畔年表 第三章 名草戸畔としあわせの女王 プロローグ/「小野田口伝」の地を訪ねて/名草の山信仰/名草戸畔と楠信仰/名草戸畔と竜蛇信仰/名草戸畔と祖霊信仰/名草戸畔は生きている /名草戸畔 顛末記/名草戸畔伝承から見えてきたこと(増補改訂版より収録)/付録1〜演劇『名草戸畔』台本(増補改訂版)/付録2〜紀氏関連の系図
名草戸畔〜古代紀国の女王伝説
著者:なかひらまい
取材協力:小薮繁喜・小野田寛郎
写真協力:小野田麻里
装幀・装画:なかひらまい
本文デザイン:山﨑将弘
発行所:有限会社スタジオ・エム・オー・ジー
判型:四六版ソフトカバー
頁数:288ページ
価格:1800円+税
コード:ISBN978-4-905273-00-4 C0039 1800E
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